オーバーハウゼン国際短編映画祭 最終日

5月4日

遅めの起床。割とたくさん寝たので風邪気味なのはすっかり治った。ホテルでの朝食を逃したので、フェスティバルスペースでスナッククーポン券を使いケーキを食べた。ものすごい量で、それだけでお腹がいっぱいに。


同じくフェスティバルスペースで、自分用のメールBOXをチェック。他の映画祭のDMなどが入っている。中に一つ、裏にメッセージの書いてある名刺が入っていた。作品を褒める言葉と、DVDをもらえないだろうかという内容。褒められて気をよくしたので、その方のBOXに入れておいた。


映画館へ向かう若者の集団。子供プログラムに入っていった。引率の先生らしき人もいたので、きっと学校の授業として来ていたんだろう。ジーンズ率100%。


12:30からコンペ9を鑑賞。
このプログラムでは金さんの作品『SUNDAY』が上映される。写真は上映前、他の監督や司会者との打ち合わせの様子。金さんを撮るフリをしながら(この辺からの写真は主に動画からのキャプチャです)、エバを撮っている事に気づいていただけただろうか。


もう一枚のこちら。金さんを撮るフリをして、アイスランドの女性監督を撮っている事は言うまでもないのだ。


金さんの作品は今まで見たことのある『Sunday』『チケット売り場の桜井さん』『YOKO』を一本にまとめ直した、集大成的な『Sunday』。上映後はいつものようにディスカッションが行われ、金さんは英語できちんと最後までやり抜いた。すごい。アイスランドの娘からも質問をされていた。


メインミールクーポン券を使って早めの夕食。カレーのようなそうでもないような不思議な料理だった。佐竹さんたちに一枚もらって、夫婦二人で3人前を完食。


ブラジル人監督に声をかけられた。お互い、何度か目が合っていたり軽く挨拶はしていたのだが、会話らしい会話をしたのはこれがはじめて。「そういえば君は何の監督?」と聞かれ、カタログを出してスティルを見せようとしたところ、その前に僕が首から下げていたパスに気付き、書いてあるタイトルを見るなり「OH! HAND SOAP!!」と大きく反応。「あのアニメーションのだろ!?すげー良かったよ」的なことを興奮気味にまくし立ててきた。


どこの国から来たのかと聞かれ、日本だと答えると、「日本の映画監督でミキタカシって知ってるか?自分は彼の作品が好きで、君の作品とは一見似ていないけど同じようなパワフルさを感じるよ」と言ってきた。いくら考えてもミキタカシがわからなかったのだが、口裂けのポーズをして「ICH」と言ってきたのでピンときた。それは次に出てきた『スキヤキウェスタン』というタイトルで確信に変わり、その監督はミキじゃなくてミイケだよと教え、自分も好きだという事と、『オーディション』というホラーがお勧めだと伝えた。三池監督はどこの映画祭に言っても必ず耳にする。世界中の映画好きの若者にとても人気があるようだ。


お土産を買ったりした後、17時からコンペ10を鑑賞。そして、いよいよ残すはクロージングセレモニーのみ。

セレモニーは全てドイツ語で進行され、英語で聞きたい人はヘッドフォンを借りて同時通訳を聞くことが出来る。英語すらわからない人(自分達)はどうする事も出来ないのだが、中沢さんが隣に座ってくださり、時々解説してくださった。

最初に挨拶があった後、映画祭スタッフたちが壇上に上がって挨拶。素晴らしい体験をさせてくれたスタッフの方々に心から感謝。クロージング作品として100年以上前に撮影された海の映像を上映。とても美しかった。


そして、いよいよ賞の発表。まずは子供部門。壇上に出てきた子供審査員達がとても可愛かった。一言ずつ順番にしゃべって賞を発表していく。今回子供部門は見たかったのだがタイミングが合わず、一つも見ることが出来なかった。こういうプログラムって子供達の反応が可愛いからその場の雰囲気が凄く楽しいんだ。子供部門のグランプリが発表された後、その作品を上映。ティーンエイジャーの淡い恋のお話だった。


続いてドイツコンペ。ドイツコンペは子供部門同様、今回一つも観られなかったので、ワクワク感はあまりない。前評判が高かったドキュメンタリーはどうやら受賞しなかったようだ。

そしていよいよインターナショナルコンペ部門。自分の受賞はないと思いながらも、それでもやっぱりソワソワしてしまう。しかし、それよりも「あ!あの作品が取った!!」とか「あれが受賞するのかぁ」など審査員の評価の基準を探って楽しんでいたという方が大きかった。自分はなくてもこっちで知り合った人が受賞する可能性はあるので、ビデオはずっと回しっぱなしだった。


教会賞、ヨーロッパ作品に与えられる賞、TV局の賞、映画館賞、批評家賞などが発表され、映画祭の賞の発表のときに、『HAND SOAP』というタイトルと共に自分の名前が呼ばれた。あまりにも驚き、しばらく椅子で固まってしまったため、慌てて回していたビデオを奥さんに託し、小走り気味にステージへ上がった。気付くと中沢さんも後に続いていてくれていた。そうだ、一人で舞台に上がっても何も話せないんだった。


日本語で「ろくに働きもせずにこうやって作品を作っていられるのも妻のおかげです。心から妻に感謝したいと思います。」と言い、中沢さんに通訳していただいた。会場からは笑い声と共に大きな拍手が起こる。挨拶を終え、舞台を降り、スタッフから写真撮影についての説明を受けて席に戻る。中沢さんにお礼を言い、放心状態のまま残りの賞の発表をボーっと聞いていた。


全ての発表が終わり、受賞作品の再上映。他の受賞作家と共に集合写真を撮るためにメインの劇場を出て、一番小さな劇場へ移動。その途中、今までに知り合ったブラジル人やポルトガル人、話をしたことはないが、お互い存在を認識していた外人さん、そしてエバなどから、たくさんお祝いの言葉をいただいた。スピーチが印象的だったためか、奥さんの方が声をかけられる事も多かった。


受賞者が集まって写真撮影をする時、フィル・ムロイの奥さんであるベラさん(映画館特別賞を受賞)に話しかけ、自分がフィルムロイのファンである事を伝え、作品集のDVDを渡した。写真撮影を終え、会場を出ると、国際審査員の一人から声をかけられる。「自分たちの与えられる賞の数には限りがあり、選べずに申し訳なかった。だけど、あなたの作品は本当に素晴らしかった」というようなことを言われた。


この、いつもビデオを回していたちょんまげの人からもおめでとうと言われた。写真撮影のときに写っていたから、何か受賞作品のスタッフの一人なのかもしれない。(壇上には上がっていなかったので監督ではない)


すぐにフェスティバルバーへ向かっても良かったのだが、荷物を整理するためと、少し頭を冷やすために一度ホテルへ帰った。その途中、誰も回りにいなくなり、奥さんと二人になった事を確認した後「いえーい」「やったーやったー」と飛んで回った。


少し休んでからフェスティバルバーへ向かうと、そこにはすでにたくさんの人がいて、町口さん、金さん、リーさんらから祝福を言葉を受けた。バーでも知らない外人さん達からたくさんの「コングラチュレーション」。とても暖かい。


外国人たちはみんな表に出てるかダンスフロアにいるかで、おとなしく席に座って話しているのは自分たちくらい。一度エバが来て「みんなは踊らないの?」と言ってきたので踊ってしまおうか真剣に悩んだが、勇気が出なかった。


下に行ってしまったエバに作品集DVDを渡した。「私に?」と驚いた様子だった。「ビコーズ アイ ラブ ユー」と言いたかったが言えなかった。ポーランドの監督にもあげた。彼はもらったことをとても喜んでくれたらしい。


いつもの日本人メンバーで話しているところにいろいろな方が代わる代わる現れる。この監督さんは州の賞を受賞した方。賞金も結構出ていた。カタログにメールドレスを書いてくれたが、そんなことしなくてもアドレスはしっかりその真下に印刷されている・・・。後で気付いた。


アイスランドの娘も来たが、自分は一言も言葉を交わすことはなく、大島さんとなにやらお話していた。こんな風に寄り添われたらどうにかなっちゃうよ。よく大島さん平気だったなあ。


前任のフェスティバルディレクター、アンゲラさん、ベラさんらとどの作品が好きだったか話し会う。二人ともリーさんの作品を気に入ったようで、自分の事のように嬉しかった。


ちょうどそこへ、リーさん登場。ベラさんが『Fly in the Sky』の作者だと教えると嬉しそうにしていた。実は2日前に金さんと3人でマイフェイバレットをいくつか挙げあったとき、リーさんは『Fly in the Sky』を挙げていたのだ。リーさんもアンゲラさんと他の作品について話し合う。


結局この日も4時頃までバーにいた。いろいろな国の若者たちと別れを惜しみつつホテルへ帰って就寝。

翌朝、帰りの空港までの車に相乗りした外人さんにもおめでとうと言われ、スピーチを褒められた。


今回の映画祭参加は、最後に受賞という大きなプレゼントをもらったが、それがなくても十二分に楽しく、素晴らしい経験となった。語学で悔しい思いを何度もしたが、逆に、英語さえ話せたら、もっともっと、とんでもなく楽しいお祭だなあと思った。

今度は6月、2週間にわたってザグレブアヌシーに参加する予定。今からとても楽しみだ。