カナダ2

昨日は再びカナダ大使館へ出向き、国際シンポジウムを昼から夜まで観たきた。知れば知るほどNFBがとても特殊で貴重な機関だという事がわかる。オープニングスピーチは山村浩二さんによる「By and With NFB 〜30年の夢の実現〜」。どんな作家でも、きっかけを与えられた作品との出会いがあり、目標となるような作家がいる。何度か聞いたことのある話ではあったが、改めて感動してしまった。今の山村さんは若者にアニメーションへの興味のきっかけを与える存在、目標にされる作家にちゃんとなっている。

前日の茶話会の席で、マーシーペイジさんらに「どんな作家が好きなの?」と聞かれたとき、「クエイ兄弟の『インアブセンティア』、パルンやコバリョフも好きです」と答えた。「まったく驚かないわ。だけど、あなたは彼らとは違ったオリジナリティをちゃんと持っているから素晴らしいわね」みたいな事を言っていただいた。その時は「やったぜ」としか思わなかったが、あそこで挙げた作家、作品は、全部山村さんから見せてもらったんだってことに、スピーチを聞きながらふと気がついた。



この日一番楽しみだったのは山村さんの新作『マイブリッジの糸(仮題)』の抜粋上映。マイブリッジの糸とは、映画誕生のきっかけとなった連続写真(左画像)の撮影のために仕掛けられた糸の事。一体どういう作品なのか、全く想像出来なかったが、抜粋映像をみてもますます謎は深まるばかりだった。アニメーションならではの動き、デフォルメ、メタモルフォーゼなどがしっかりあり、その心地良さがバリバリあるにも関わらず、観終わった後の余韻は実写映画を観終わった後のもののようだった。アニメアニメしていないというか。かといってすごく写実的なキャラクターデザインかといえば決してそんなこともなく、とても不思議な体験だった。完成が楽しみのような(驚異的という意味で)怖いような。

アニメーションに魅せられてアニメーションを作り始め、にもかかわらず、それらの模倣で終わることなくオリジナリティや新しい可能性を提示出来ている作家は意外と少ないように思う。みんなそれを目指してはいるんだろうけど、実現するのは難しい。だから僕は広島で数日間いくつもプログラムを観続けていると、ある瞬間から「どれもこれも同じじゃねーか」って気がしてきて、「もしかしたら自分はアニメーションが大嫌いなのかもしれない」と思うようなってしまう。


どのシンポジウムも興味深いものばかりだったが、最後の青木君達とNFBのお二人との座談会だけは見ていて辛かった。和田君が以前、企業の前でプレゼンをする機会があったにもかかわらず、どの企業も全く作品に興味を示さず暗い気分で帰宅したという話を思い出した。まったく逆の現象を目の当たりにしてしまったわけだ。シンポジウム終了後、気のせいか和田君はとても嬉しそうだった。

あの場で、ちゃんと「自分は人を笑わせるような作品を作りたい、オリジナル企画で作っても今とそんなに変わる事はないと思う。それが自分の作家性なのかも知れない」と言い切った青木君は素晴らしかった。カッコ良かった。自分が作りたい物を直球勝負で作るのが一番だと思う。