オーバーハウゼン国際短編映画祭 2日目

4月30日

今日から本格的に映画祭がスタート。ホテルで朝食をとった後、まずはフェスティバルオフィスへ向かった。映画祭の広報用DVDに作品を入れても良いかの許可を求められていたが、答えないまま出発してしまっていたので、承諾書とマスターテープを渡さなければならなかったのだ。オフィスに着くと、かわいらしい女性が一直線に僕に近づいてきて、「ハーイ、私はエバ。あなたはケイでしょ?」的なことを言ってきた。ずっとメールのやり取りをしていた方だった。


会場へ向かい、チケットを購入。といってもパスがあるのでお金は払わない。人気のあるプログラムは満席で入れないこともあるため、あらかじめチケットを買っておいたほうが無難だ。翌日以降の分も購入できる。会場は Lichtburg 、Gloria 、Star 、Sunsetとあり、大小様々。しかし、全て同じ建物の中にあるので、移動はとても楽だ。


最初に見たのはFrom the Deep:The Great Experiment 1898-1918。
大昔のフィルム作品に現代の音楽家が音楽を付けたもの。フィルムミュージアムアーカイブセンターなどに所蔵されているものらしい。風景を撮ったドキュメンタリー的なものからベタベタのコメディまで様々。コメディでは結構笑わされた。100年以上前の作品なのに、いまだに観客を爆笑させているのは結構凄いことだと思った。と同時に、自分の作品が100年後の人間にどう観えるかを考え、通用しないだろうなと思った。今度から100年後の人間に対してももっと気を使って作ってみようかな。


次に観たのは日本から来ていたMIACAプログラム。詳しいことはわからないが、現代美術ベースで映像を作っている人たちの団体らしい。キュレイターの長谷川さんと作家のコタカさんが現地まで来ていた。同時刻にメイン会場でコンペのプログラムがあったこともあり、お客さんはあまり多くなく、なによりも気の毒だったのは上映トラブルがあったことだった。時々画面にノイズが出る状態が続き、さらにそれを直すために中断。出て行くお客さんもいて、とても嫌な汗をかいた。心臓に悪い。


会場を出ると、京都在住の韓国人留学生、金さんと会えた。昨年のイメージフォーラムフェスティバルのパーティーで一度お会いして以来だ。金さんの作品はとても好きなので、オーバーハウゼンにノミネートされていると知ったときはとても嬉しかった。昨日、姿を現さなかったので心配していたのだが、どうやら、体調が優れなかったよう。いろいろとお話できた。


次に観たのはミュージックビデオのプログラム。立ち見が出るほどの満席で、とても人気のあるプログラムだった。確かに観ていて普通に楽しめる。とはいっても、性器がしっかり写ったポルノを素材に使っているものがあったり、口に手をつっこんで涙を流しながら女の人がただただゲロを吐き続けるものがあったりと普段見ているPVとは少し雰囲気が違う。日本のSOL(OOIOO)も上映されてた。


次のプログラムまでの時間を利用して食事に。メインミール券の使えるお店に中沢さんご夫妻と一緒に向かった。オーバーハウゼンでは最初にメインミール券、ドリンク券、コーヒー券、スナック券、ビール券が全日程分もらえ、様々な会場でそれらを使うことが出来る。すでにお店には列が出来ていて、まるで何かの配給か給食のようだった。



今日のメニューはお魚とお芋。どちらも超美味しかった。


次に観たのはコンペティション
すべて書くときりがないので、印象に残ったものだけを。

『Dark Island』 丁寧に作られた紙で出来た世界。一見、アニメーションのようだが、登場人物などには全て針金が付いており、ゆるーい感じで人形劇のように動く。内容は意外にもシリアスよりで、ぱっとしない思春期の青年のお話だった。

『Lumikko』 いかにも女の子が撮ったって感じの映画。部分的に木炭アニメーションも使われていて、その使い方が面白かった。このプログラムではほとんどが少年、少女のもやもやを描いたものだった。もしかしたらテーマごとにプログラムが組まれているのかもしれない。

『View』 韓国人の女の子によるドローイングのアニメーション作品。見事だった。他の作品も観てみたい。金さんに紹介してもらう約束をした。 

『Electric Light Wonderland』 セリフが分からなかったので、理解は出来ていないが、画の切り取り方が面白く、結構楽しめた。

『INK』 貧しいウガンダ(?)の子供達の生活を淡々と見せるサイレントの作品。25分のサイレントは正直退屈な部分もあったが、確信を持ってやっていることは伝わった。


上映前に監督から軽く挨拶があるのだが、監督達の出席率の高さに驚かされる。このプログラムでは全員来ていた。上映後は、監督たちと司会者二人(選考委員)によるディスカッション。各作品について質疑応答がある。このスペースでは常に何かしらのシンポジウムのようなものが行われていた。


次に観たプログラムはコンペティション1。
昼間のメイン会場での回を観られなかったので、Gloria(2番目に大きな会場)での鑑賞。こちらでは監督の挨拶はない。意外にもちゃんとそこそこ人が入っていた。このプログラムでは思春期ものは一つもなかった。やっぱりテーマ別?印象に残ったものをいくつか。

『Fly in the Sky』 フィル・ムロイさんの奥さん、ベラさんの作品。窓のハエをコマ撮りを使いながら撮影。期待していたほどではなかったかな。

『This is Alaska』 アラスカに魅せられ、そこで生活している人々を追ったドキュメンタリー。後半、「時々、もしかしたらここがアラスカじゃないんじゃないかって思うときがある」と、フェイクであったことがわかる。

『Rise』 路上でおかしなパフォーマンスをする男の映像と、その両親と思われる男女のナレーション。「自分には全ては理解できないけど、信じている」みたいな言葉が胸を打った。

『Wall and tower』 小屋を建て、塀を作り、旗を立て、一つの小さな国家を作る人々。きっと政治的な意味があるのだろうが、そのバックボーンが自分にはわからず残念だった。


上映トラブルがあり、音の出ない作品があったが、最後にもう一度流していた。自分の時は上手くいきますように・・・。上映が終わると0時過ぎだったため、ホテルに帰ってすぐに眠った。すでに疲れがたまってきている・・・。