耽溺図断簡

気分転換にふらっと近所の本屋へ行き、立ち読みをしていたときのことです。

何冊かの雑誌をみた後、『別冊太陽 肉筆春画』をなにげなくパラパラ観ていると、そこに今までみた事のある春画とは明らかに異なる趣のものをみつけました。

なんだかとてもエゲツナイのです。まあ、春画ならば、大抵、性器の描写はエゲツナイものですが、その絵は人間の表情の描き方がとってもエゲツナイ。性器も他の春画に比べて1.5倍くらいエゲツナイ。『耽溺図断簡』というもので、載っているのは三図だけ。手元に置いておきたくて、それだけのために購入してしまいました。

残念ながらネットで画像検索しても見つからなかったので(それどころか"耽溺図断簡"でページ検索しても2,3件しか出てこない)、本屋さんで立ち読みしていただく他ないのですが、もう少し具体的に想像していただくために、解説を抜粋したいと思います。


-性愛の生々しさを誇張した異様なまでの迫力-
本画巻は近年になって初めて表に出てきた作品であるが、これまで知られている江戸期のいかなる春画と比較しても、本図に類似した作品は思いつかない。その執拗で露骨な描写、簡素で的確な写生力、伸びやかで安定した筆捌き、それらが相俟って大ぶりのがめんから一種異様な迫力が伝わってくる。本作品は所謂肉筆春画に共通する華麗さや色っぽさを意識的に捨て去り、人間の性愛の生々しさをリアルに捉えようとしているといえよう。では、これほどの特異さと力量を示し得た絵師はだれかというと、すぐには思いつかない。



僕の作品や趣味をご存知の方なら、僕がこの絵に喰いついたわけが解説を読んだだけでなんとなくわかっていただけるのではないでしょうか。

解説では、このあと、この作品の特色から類推される絵師をあげ、そこから天明・寛政期に活躍した絵師によるものではないかと推測、現在三図だけであるが、おそらく全四巻または二巻で十二図であったものではないかと書いています。うー・・・全部観てみたい・・・。残りのものが発見されることを心から祈りたいと思います。